恋の訪れ

「えっ、ちょっ、莉音!?」


真理子のあたふたした声が響く。

その声にあたしまでもが驚く。それは目から落ちた一粒の涙で。


「え、莉音?どうしたの?」


涙をそっと拭ったあたしに香澄先輩の戸惑った声が落ちた。


「…ごめん、帰る」


小さく呟いて横に置いていた鞄を掴む。


「えっ、ちょっと待って、待って」


立ち上がろうとするあたしの腕を真理子は掴む。

その所為で、立てなくなってしまったあたしは、また新たに落ちてきてそうな涙をグッと堪えた。


「莉音、どうしたのよ…」


香澄先輩が困った様子であたしを覗き込む。


「何があったの?話してみなよ、聞くから」


続けられた香澄先輩の言葉に小さくため息を吐く。

話してみなって言われても、何をどう言ったらいいのかなんて分かんない。


「莉音、気にしてんだ。昴先輩の事」


真理子の言葉に少し目が泳いだのが自分にでも分かった。


「やっぱり」


続けられた言葉と同時に真理子は少し口角を上げ微笑む。


「別にそんなんじゃないけど。学校来てなかったから…」

「だからそれを気にしてるって言うの」

「…サクヤに聞いたら?」


真理子の後に続けられた香澄先輩の言葉に、首を傾げると同時に眉を寄せた。
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