恋の訪れ
「サクヤ先輩は知らないって…」
「つか、そんな訳ないじゃん。あのね、サクヤと昴は腐れ縁ってやつなの。知らないわけないと思うけど」
″ここに呼んじゃおう″
付け加える様にそう言った香澄先輩は携帯を掴み耳に押し当てる。
その行動があまりの速さで、いいです。って言うタイミングさえも逃してしまった。
「あれー、出ない。何してんのよ」
香澄先輩、携帯を耳にしたまま顔を顰める。
「ほら今日はクリスマスだしー、サクヤ先輩も女の子とワイワイしてるんじゃないんですかー?」
真理子はあたしがあげたクッキーを口に運びながら、香澄先輩をジッと見つめた。
「うーん…そうかも。―――あ、出た」
その言葉に咄嗟に視線が香澄先輩に向かう。
「もしもーし、サクヤ?」
「つか、…なに?」
香澄先輩が隣に居る所為か、静まり返った部屋にサクヤ先輩の声が受話口から漏れる。
その声に何故だか変な胸騒ぎがした。
「もしかして寝てたの?」
「寝てた」
「は?今、3時だけど」
「朝の10時から寝たから。で、何?」
「ちょっとさ、真理子ちゃんの家に来てよ」
「はぁ?なんで?」
「ちょっと聞きたいことがあるの」
「だったら今言えよ。すげー眠い」
「電話じゃ無理だからお願いね。待ってるから」
一方的に切った香澄先輩に真理子はクスクス笑いだした。