恋の訪れ
「―――おー、昴?お前、何処いんの?」
「何処って学校」
「いつ終わんの?」
「さぁ…5時くらい?つか、なに?」
「終わったら俺と遊ばねー?俺、暇なんだよな…今日はクリスマスだし」
クスクス笑うサクヤ先輩に、真理子と香澄先輩までもが笑いだす。
だからサクヤ先輩は顔を顰めたまま口に人差し指を立てた。
「はぁ?何でお前と過ごさなきゃいけねーんだよ。つか俺、すげー眠いの。ここ最近寝てねーから調子悪いし。そこら辺の女誘って遊べよ」
「いねーからお前誘ってんの」
「マジ、勘弁。つか、そんな事でかけてくんなよ、切るぞ」
「…あ、切りやがった」
サクヤ先輩は耳から離した携帯の画面をジッと見つめる。
「ま、そー言う事だから昴5時に終わるってさ。今から行けば丁度いい時間っしょ」
「莉音、行ってきちゃいなー。自分の目で確かめてきなよ」
隣の真理子はあたしの腕を数回揺する。
「だよね。昴んちで待つよりは行った方がいいよ。そうと分かれば早く行くよ、莉音。って事でサクヤお金」
手の平を差し出す香澄さん先輩はサクヤ先輩に向かってニコッと微笑んだ。
「は?何で?」
「だってタクシー代、莉音ないと思うし、あたし達もないのね。だから」
「はぁ!?なんなの、お前」
小さく舌打ちをしたサクヤ先輩はポケットから財布を取り出し、一万円を取り出した。
「ありがとう」
「それで足りるから」
「すみません…サクヤ先輩。後で必ず返します」
申し訳なく口を開くと、サクヤ先輩はフッと笑みを見せた。