恋の訪れ

難しい事で敷き詰められているパンフレットを見た所為か、軽く眩暈が起きる。

あたしには、物凄く物凄く無縁な所。

そんな所で昴先輩は一体何をしてるんだろうって。


暫くして時計に視線を送ると既に5時を回ってた。

複雑な感情と、不安な感情が入り交ざり、何故か胸が苦しくなってきた。



出入り口の一番近いテーブルに移動し、そこで座る。

暫くして机に左頬をつけて目を閉じようとした瞬間、


「…莉音?」


不意に聞こえた声に、咄嗟に目が開き、あたしは慌てて顔を上げた。


「あ、昴先輩…」

「お前、なんでここに居んだよ、」


案の定、昴先輩は眉間に物凄く皺を寄せてあたしを見下ろす。


「…来ちゃった」

「来ちゃったじゃねーだろ。もしかして、さっきのサクヤの電話…」

「うん」


コクリと頷くと昴先輩から物凄いため息が降りかかった。


「まじ迷惑。ここまでどーやって来た?」

「タクシー…サクヤ先輩にお金借りた」

「はぁ?つかそれ俺が返さねーといけねーだろうが」


昴先輩は分かってるかのように、物凄く表情を崩す。


「そのような事…言ってたけど、でも、あたしが返すから」

「いらねーよ」

「だって昴先輩、何も教えてくれないんだもん」

「……」

「それに嘘つきだし」

「は?嘘つき?」


コクリと頷くあたしに、「つか、とりあえず帰んぞ」そう言って足を進めていく先輩の背後を追うと、昴先輩は出てすぐにあるコンビニへと入った。
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