恋の訪れ
そこで缶コーヒーとミルクティーを手にした先輩は「これでい?」あたしの目の前にミルクティーを見せる。
「うん。ありがとう」
コンビニを出て渡されたミルクティーは暖かくて、寒かった手に丁度良かった。
「つか嘘つきって何?」
車の乗ったと同時に昴先輩は缶コーヒーのプルタブを開け、あたしに視線を送る。
「お姉ちゃんから聞いた。あたしの耳って、あたしの所為じゃん。昴先輩は何も悪くないじゃん。どうして自分だって言うの?」
「あー…それ」
別にどうでもいいようなつぶやきをした先輩はコーヒーを口に含んだ後、タバコを取り出した。
そのタバコに火を点けると、先輩は「帰ってからにしよ」なんて、またはぐらかす。
「またそーやって話しはぐらかすよね…」
「帰ったら莉音の聞きたい事、全て話すから。とりあえず帰ろ。その前に飯食ってい?昼飯食ってねーから腹減ってんだよ」
「えっ、食べてないの?」
「あぁ。時間なかったから」
そう言った昴先輩の横顔がなんだか物凄く疲れてるように見えた。
サクヤ先輩との電話でも、眠いし調子悪いって言ってたから。
だから何となく来た事に今更ながら後悔してしまった。
帰り途中にあったイタリアンの店に入るも、物凄いカップルの人の多さに、今日ってクリスマスなんだと思い知らされる。
だけどあたしの頭の中ではクリスマスどころではない。
それは昴先輩も同じだと思った。
全ての事を聞き出そうと、それしか頭の中はなかった。