恋の訪れ
昴先輩の家に着いた頃にはもう既に20時を過ぎていた。
美咲さんも昴先輩のパパも聖くんも誰も居ない…
「シャワー浴びてくっから」
先輩の部屋に取り残されたあたしは、本棚にギッシリと埋まった物凄い本の数に目が釘づけになる。
バイクの本、車の本、ファッションの本…
それに紛れるように置いてある英語の本。
手に取ってそれを見てみるも、全てが英文で何が書いてあるのかも全く分からない。
その英文の本が何冊か分からないくらいに棚にある。
やっぱ昴先輩って、凄いんだ。
本当に頭がいいんだ。
その本を棚に戻した時、ガチャと開いたドアに視線を向けると、上半身裸のままで入って来た昴先輩に目を見開いた。
「服、着ないんですか?ってか普通に寒いですよね?」
「暖房つけてっから暑い」
来た時よりも温度があがっていく部屋。
先輩は髪をタオルで拭きながら、テーブルを囲んであたしの斜め横に腰を下ろす。
そのままテーブルに置いてあったタバコを掴み火を点けると、「別に嘘はついてねーけどな」そう言った昴先輩の声で、視線を上げた。
「どー言う事?」
「確かに、莉音が行こうって言った。でもそれを止めなかったのは俺だから」
「でも、あたしが言う事、聞かなかったから」
「そだな。お前、すげー頑固だったからな」
「が、頑固って…」
正直言ってホントに覚えてないのは確かで、これが確実だとはあたしは言えない。
でも頑固と言われれば何故か悲しくなるわけで、そんなあたしに昴先輩は馬鹿っぽく鼻で笑った。