恋の訪れ

「って言うか、もう過去の話し辞めねー?」


タバコの煙を吐きながら昴先輩は背後にあるベッドに背を付けた。


「じゃあ…先輩はあそこで何してたんですか?医療ってなんですか?」

「うーん…今後の為に」

「今後の為?」

「そう」

「…嘘つき」

「じゃ、莉音の為に行ってるって言ったら、お前はどーする?」

「…え?どー言う事?」

「そう言う事」

「え、ごめん。よく解んないんだけど」


思わず首を傾げて視線を落とす。

だって本当に意味が分かんない。


タバコを咥えたままベッドに頭をつけ、天井を見上げる昴先輩に一瞬だけ視線を向け、再び視線を落とす。

何故か、あまり聞かない方がいいかもなんて思ってしまった。


あたしの為って、なに?と思った瞬間だった。


「俺が治してやるから、莉音の耳…」

「…え?」


不意に聞こえた声に小さく漏らす。

自然に向いたあたしの瞳は微かに潤んでた。


「時間かかる。物凄い時間かかるけど、俺が治すから」

「え、ちょっと待ってよ。…え、昴先輩が?」

「あぁ」

「え、待って、待って。状況が全く掴めないんだけど…」

「まー…あれだな、お前馬鹿だからな」


真剣に言ってんのに、馬鹿っぽく笑う昴先輩に「ひどいっ、」そう声を上げて眉間に皺を寄せた。
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