恋の訪れ

「あの時の衝撃で少しだけ進行してる」

「で、でも聞こえてるよ?」

「ちゃんと聞こえてんの?ちょっとは違和感あんだろ?」

「……」


確かに、確かに聞こえてるけど、たまにボワンとした感覚はたまに残ってる。

でも、だけど、このまま悪くなるとは考えられない。

だって、ここ何年も大丈夫だったもん。


何故か分かんなかった。

不意に頬に涙が走った。


一滴でいいのに、何故か溢れ出す様に涙が頬を伝った。

それを手で拭う事も出来ない。


俯いてポタポタと足に落ちていく涙を阻止出来なかった。


「ごめん、莉音…」

「……」

「ホントにごめんな」


謝られる意味すら分かんなかった。

なんであたしは謝られているんだろうって…


「謝んないで。…昴先輩はいつも遅刻するルーズな人だって思ってた。来てもすぐに帰っちゃうし。それは…勉強してたからなの?」

「あぁ」

「あたしの所為で?」

「だから莉音の所為じゃねーってば」

「だって、やっぱあたしの所為じゃん!」

「…莉音」

「別にいいよ!治してもらわなくったっていい」

「だから、莉音って、」

「昴先輩の今までの時間、削って来たのはあたしじゃん!」

「違うって、」

「そうだよ!あたしの所為で勿体ない時間いっぱい使ってん――…」

「口、塞ぐぞ」

「…っ、」


遮られた言葉と同時に、身体がふわりと揺らぐ。

気づけばあたしの背中が床にくっついていて、真上から昴先輩が見下ろしてた。



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