恋の訪れ
どれくらい時間が経ったのか分かんなかった。
部屋に戻ると先輩は既に目を瞑ってて、その端正な顔に見惚れてしまった。
分かっていたけど。
ずっと分かっていたけど。
高校に入って見た時から、端正な顔だと思ってた。
みんながカッコいいって物凄く騒ぐ程。
別に興味すら何もなかったのに…
ベッドに背を付けて腰を下ろす。
鞄の中から携帯を取り出して見たものの、誰からも何も入ってなかった。
「…莉音?」
背後から先輩の手が伸び、あたしの頭を軽く撫でる。
その腕は下に落ち、あたしの腕をグッと掴んだ。
「寝よ」
「一緒に?」
「そう一緒に」
そんなあっさり言うもんだから尚更ドキドキ感が高まる。
グッと引っ張られる腕の所為で、あたしの身体がベッドに行く。
「ちょっ、なにすんの?」
ベッドに入った瞬間、昴先輩があたしの身体に覆いかぶさるもんだから思わず戸惑った声が漏れる。
「何って、お前の右側に行こうとしてる。じゃねーと、聞き取りにくくなるかもだし」
「あ、あぁ…」
素っ頓狂な声を出してしまったあたしに、右隣に移動した昴先輩のクスクス馬鹿にしたような声が聞こえる。