恋の訪れ

「お前さぁ…何でそんな恥ずかしがってんの?」

「別にそんなんじゃないから」

「つか、そう言えば何でお前ここに居るわけ?」



その言葉で、シーツをゆっくりと剥がす。

だけど昴先輩に背は向けたままで、「なんでって先輩が連れて来たんじゃん」思った通りの言葉を吐き出した。


「じゃなくて…、あの男。ヒロくんっつー奴はどうした?」

「……」

「好きって言われてただろ」

「…聞いてたんだ」

「聞いてはない。聞こえてきた」

「どっちも同じだと思うけど」

「そいつの所、行かなくていいのかよ」

「……」

「ずっと好きだったんだろ」

「……」

「俺より優しいって、俺より素敵だって、言ってたじゃねーかよ」

「……」

「つか聞いてんの?莉音さ、都合悪くなったら無言になんのやめてくんね?」

「……」

「莉音とヤりたい」

「ヤダ」

「それは答えてくれんのな。後は無視な訳?」

「……」


無視してる訳じゃない。

ただヒロくんを断ったのが先輩だって言えない。


「喋んねーんだったらマジ襲うけど」


グッと背後から抱きしめられる力に、「ちょ、何すんの?」慌てて昴先輩に顔だけを向ける。


「だって莉音、口開かねーし」

「…断ったの。だからお願い、離してよ」


昴先輩の言葉に乗せられたかのように、すんなりと口が開いてしまった。

なのに先輩はあたしから離れようとはせずに「なんで?」なんて問いただす。

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