恋の訪れ

「キスしてい?」

「え?」


昴先輩の続けられた言葉に思わず戸惑った。

一度視線がかち合うも、あたしの視線はすぐに逸れる。


「いいよって言わねーの?」

「え、なに?」

「昔は莉音が、キスしたいって言ったら俺は″いいよ″って言ってたけど」

「…っ、」

「だからいい?」

「ちょ、待ってよ。あたしホントに知らない」

「ってか今が初めてじゃねーんだし。だから別によくね?」

「あ、あのさ。昴先輩は色んな人と慣れてるからいいいけど…」


あたしは全く慣れてない。

付き合った事はあるものの、結局はすぐに別れちゃったから経験なんて浅い。


「言っとくけど俺さ、自分から″したい″とか一切言った事ねーんだけど」

「…え?」

「全部、全部、女から誘われてしてただけ。俺から言ったのは莉音が初めてなんだけど…」


″だから″

付け加える様に言った瞬間、不意に落ちてきた唇が自棄に温かった。

なにが″だから″なのかも分からない。


覆いかぶさるように、あたしの唇を求めて来る昴先輩を避ける事も出来ない。

むしろドキドキ感が高まる一方で、余計に避けられない挙句、あまりの激しさに息をすることも忘れそうだった。


唇をこじ開けられて入ってくる先輩の舌とあたしの舌が絡まり合う。

もうそれだけで頭が真っ白になりそうだった。


初めてじゃないにしても、あたしにはついて行けない…
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