恋の訪れ
「…ん、先輩っ、」
呼吸が出来た瞬間を狙って、小さく呟く。
その呟いた所為は先輩の手が、あたしの胸に触れたからであって、あたしは先輩の手を掴んだ。
「なに?」
「だ、だめ…」
「サクヤには触らせといて俺にはダメなわけ?」
真上から意地悪そうに笑う先輩にあたしは困った表情を浮かべた。
「だからあれは…お姉ちゃんが」
「香恋さんねぇ…」
「それに小さいって笑ってたし」
「つかサクヤは胸好きだけど、俺は興味ねーし。だから揉んでやるって」
「い、いいから!」
クスクス笑う先輩に頬を膨らませる。
「つかマジでお前のねーちゃん、なんなの?」
笑いが呆れため息に変わると、昴先輩はスッとあたしから離れたと思うと、自分の頭に腕枕をしたまま天井を見上げた。
「なんなのって…。昴先輩はずっとお姉ちゃんが好きだと思ってた」
「てか凄い勘違いもいいところだな。でも香恋さんには助けてもらってるし」
「……」
「高校受験の時にさ、香恋さんと出くわしたのが最初で。俺、正直初め見た時、分かんなかった」
「……」
「すっげー派手な女が俺の前に現れて、″昴だよね″なんて言うもんだから」
「まぁ、確かに…」
思い出したかのように昴先輩は笑ってた。
確かにあんな物凄い派手なお姉ちゃんが現れると誰だってビックリするに違いない。