恋の訪れ

「…昴先輩、」

「なに?」

「美咲さん達、帰って来る」

「は?つかアイツの名前だすなよ、調子狂う」

「だって…」

「帰って来ねーっつっただろ」

「でも分かんないよ」

「分かる。親父の仕事が忙しいからそっち手伝ってる。毎年、会社に泊まって帰って来ねーから」

「……」

「つか、お前…」


そう言った先輩は少し顔を上げ、あたしを見た瞬間、フッと笑う様に口角を上げた。


「なに?」

「莉音さ、こんな事でドキドキしてどーすんの?これ以上になったらどーするわけ?」

「…これ以上って、」

「今から教えてやろっか?」

「…え?」


意地悪に笑った笑み。

そして不意に塞がれた唇に、また激しく熱が伝わる。

抵抗できないまま昴先輩の手があたしの服の中に入り、肌を撫でられるその感覚に頭が真っ白になり、何度も唇を合わせてくる先輩に意識さえもぶっ飛びそうになる。


「…莉音が悪い。俺の責任とれよ」


離れた唇から密かに聞こえる先輩の声に「…責任って?」と小さく声を漏らす。


「俺の感情乱したの、お前だから」

「……」

「だから責任とれよ」

「どうしたらいいの?」

「莉音を俺にくれたら、それでいいから」

「…っ、」

「でも莉音が嫌なら拒否っていいから。無理にしたくないし無理しなくていいから」


拒否る言葉なんて出せなかった。

だって昴先輩が好き。

だからもっと触れたいと思った。

昴先輩にもうされるがままで、それを答えるかのように、あたしは昴先輩の肌と肌を何度も抱き合わせてた。


あぁ、ダメ。

やっぱ昴先輩が好きなんだ。


冷たかった先輩の肌が徐々に温かくなり、2人の吐息が重なり合う。

お互いの熱を感じ合う様に何度も触れ合い何度も唇を交わす。

自分が自分じゃないように、微かに漏れて感じるその声に、恥ずかしさを隠す様に目を閉じ、


「…莉音」


そう呼ばれて快楽に達した時、昴先輩を抱きしめたまま、あたしは闇に落ちた――…
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