恋の訪れ


―――…


「あー、もうだめだわ」


大みそかの前日。

真理子と2人で居ると、さっきから真理子は何度もティッシュで鼻を抑えてた。


「どうしたの?風邪?」

「んー…そうかも。タツキと寝すぎたかも」

「えっ!?」


思わず声を上げると真理子はクスクスと笑みを浮かべる。


「やだっ、莉音ったら。昴先輩と恋に落ちたんでしょ?」

「え、えぇっ、」

「顔にそうだって書いてある」


咄嗟に頬を触ってしまった。

案の定、真理子からは「うわっ、図星なんだ」目を見開いてあたしを見る。


あの日以来、真理子と会うのは初めてで、もちろん昴先輩の事など何も言ってない。

むしろ、なんとなく言えずにいた。

あの時の出来事を思い出すと恥ずかしくて…


「でも…何もないよ」

「何もない事ないでしょーあの日はね、莉音行っちゃうからちょっと寂しかったよ。毎年、莉音と一緒なのに」

「うーん…ごめんね。で、どうしたの?」

「タツキに会いに行ったよ」

「へー…」


そんな事を言うもんだから、頭の中で昴先輩が言った事が思わず駆け巡ってしまった。


″真理子ちゃんってさ、好きそうじゃね?″

″セックス″

なんて言った言葉が浮かぶ。

だから慌てて頭の中を真っ白にしようと思い、深く深呼吸をした。


やばい。

昴先輩って、案外するどいのかも。

と思った時だった。


「あの日からタツキとエッチ三昧だったから風邪引いたみたい」

「え、ちょっ、真理子」


とんでもない事を言いだすから、あたふたするも、真理子はニコニコと笑ってあたしを覗き込んだ。
< 330 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop