恋の訪れ

「付き合おうなんて言われてない」


不意に口が開いてしまった。

目の前の真理子は、首を傾げてあたしを見た瞬間、表情を緩めた。


「えー、でも一夜を共にしたんじゃないの?」

「……」

「だったら、もう付き合ってるじゃん」


そう真理子は言ったものの、嫌な言葉が頭の中を駆け巡った。

″一回寝たくらいで何で付き合わなきゃいけねーんだよ″

遠い遠い昔にそのような言葉を聞いた。


え、やだ、それって。


「…どうしよう、真理子…」

「えー、なに?どうしたの?」

「やばい」

「だから何がよ?」

「真理子はどっちから付き合おうって言った?」

「あたしはタツキだけど」

「それはどう言う展開で?」

「あら、いやだ莉音ったら。そんな事、聞いちゃうんだ」

「…え?」

「あたしはね、エッチしたからそのノリで」

「えっ!?」


聞いてから、聞くんじゃなかった。なんて思ってしまった。

思い出す様にクスクス笑みを浮かべてる真理子が怖い。


だけど、でも、要するに、あたしもその勢いなのかもしれない。

でも、昴先輩からもあたしからも、付き合おうなんて言ってない。


やっぱ一夜だけの…

だってあれから何もないもん。

昴先輩は忙しいから…
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