恋の訪れ

結局、冬休みはとくに何もなかった。

あの日…以来なにも。

昴先輩と会ったものの、結局何も聞けずにいた。


「えー、莉音。まだ聞いてないの?」


始業式、終了後。

真理子の大きな声が教室に響く。


「うん…」

「てかさ、もういいじゃん。そんな事?」

「そんな事?」

「だってもうさ、ヤッたんだからいいじゃん」

「ちょ、真理子!声、大きいって、」


唇に人差し指を立て、顏を顰めながら真理子に言う。


「だからね、もう昴先輩見てても莉音が好きなんだーって感じするし」

「でも…」

「てかさ、莉音。何そんな不安がってるの?」

「あ、あのね、真理子…」


教室の中心に居たあたしは、真理子の腕を軽く引いて、隅の方に移動する。

そして真理子の耳元で、


「あたし聞いたの」


小さく呟いた。


「なにを?」

「言いたくないけどさ。すごーく前だけどね」

「うん」

「入学してすぐなんだけどね。昴先輩…女の子泣かせてたの」

「へー…でも普通の光景でしょ?」

「いや、だから。あのね、それで…」

「もう、なんなのよ、アンタは!」


背中をバチンと叩かれ思わず顔を顰める。

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