恋の訪れ
「だから…その時にさ、″一回寝たくらいで何で付き合わなきゃいけねーんだよ″って言ってたの!」
「へー…そうなんだ」
「そうなんだ、じゃないじゃん」
「だって、好きでもない女だったらそうなんじゃないの?」
「えー…」
「昴先輩、ものすごーくモテるからね。断るのも一苦労なんだよ」
「え、ちょ、真理子」
ニコっと微笑んだ真理子は鞄を手に教室を出ていく。
そんな真理子を追っかける様にして、昇降口に行き、靴に履き替えた時、
「あ、丁度いいじゃん」
あたしの耳元で、笑みを満開に浮かべた真理子はあたしの腕をおもいっきり引いた。
「ちょ、真理子っ、」
その衝撃で、額を目の前に居た誰かの背中に衝突する。
痛い。って思ったのも束の間だった。
「痛てーな、」
トゲのあるような声が頭上から落ちてきてすぐ、
「お前かよ、莉音」
顔を顰め、ため息交じりで見下ろしてくる昴先輩の声。
「ち、違うの。真理子が…」
「真理子ちゃん?」
「そ、そう。…って、あれ?居ない…」
後ろを振り返って、探すも真理子の姿は何処にもない。
真理子、最悪。
ほんとに最悪。
「つかお前、マジ痛かったんだけど」
背中を軽く摩る昴先輩の隣で、サクヤ先輩は気味悪い笑顔を浮かべてた。
やばい。
絶対、何か企んでるに違いない思った時、サクヤ先輩はあたしの隣に立った。