恋の訪れ

「莉音ちゃん、激しいね。こんな所で昴に抱きつくなんて」

「え、違う。真理子が…」

「でも真理子ちゃん居ないし」

「だからさっきまで」

「もうさ、我慢出来ないんだったら図書室でヤってくれば?」

「え、えぇっ!サ、サクヤ先輩っ、」


声を上げたあたしにサクヤ先輩がクスクス笑いだす。


「おい、サクヤ。こいつで遊ぶのやめろって」


グッと昴先輩に引かれたあたしの腕。

その所為で数歩足が前に進む。


未だケラケラ笑ってるサクヤ先輩に、「じゃーな」昴先輩の少し不機嫌な声が落ちた。


「昴先輩っ、」


昴先輩に腕を掴まれたまま、進んで行く足。


「もうサクヤの奴、お前虐めるの好きだから適当にあしらっとけよ」

「でも…って言うかね。サクヤ先輩だけじゃなくて真理子も、お姉ちゃんもなの」

「なんて言われてんの?」

「うーん…今日はどうだった…とか。したの…とか」

「ヤッたんだからうん。つっとけよ」

「えー…、そもそも先輩はあたしと…付き合ってるんですか?」

「は?」



やっと言ってしまったと思えば、昴先輩の素っ気ない言葉が落ちて来る。

足を止め見下ろす様に、顔を顰めた先輩は、次のあたしの言葉を待つようにジッと見つめてきた。
< 336 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop