恋の訪れ

結局、昴先輩の家に行くまで無言だった。

あたしが何も話さない所為か先輩も無言だった。

いや、むしろ先輩が話さないからあたしが無言だった。の、ほうが正しい。


「…莉音。先部屋行って暖房つけて」

「うん」


言われるままに先輩の部屋に入って、暖房を入れる。

床に腰を下ろしたあたしはテーブルの上にあった車の雑誌をパラパラと捲った。

暫くして入って来た昴先輩は手に飲み物を抱えてて、それをテーブルに置く。


「冷たいやつしかねーけど」

「うん、いいよ」


そう言って束の間だった。

いきなり制服の上を脱いだ昴先輩は、あたしの隣に来て意地悪な笑みを浮かべる。


「莉音も脱げば?」

「…え?」


唖然とするあたしはただ目の前に居る昴先輩を見つめるも、目が咄嗟に泳いでしまった所為ですぐに逸らす。


「あれ?今からしねーの?」

「な、なにを?」

「何をって、セックスしかねーだろ?」

「えっ、なんで!?」


あたふたするあたしに昴先輩は更に笑みを浮かべた。


「だって莉音の発言が足りないように聞こえたから」

「えっ、足りないって?」

「セックスが。一回じゃ物足りないって、」

「え、ちょ…あたしそんな事言ってないよ?」

「一回寝たくらいで何で付き合わなきゃいけねーの。って確かに言った記憶はある。だからもっと頻繁にすればいいんだろ?」

「えぇっ、」


やっぱ昴先輩もあたしの事、虐めるの好きなんじゃん。

困ってるあたしを見て、口角を上げる先輩に次第にあたしの頬が膨らんだ。
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