恋の訪れ

「俺は既に莉音と付き合ってると思ってた。でも莉音はそう思ってなかったって事?」

「だ、だって…不安なんだもん」

「不安?」

「だって昴先輩…いっぱい女の人いるんだもん」

「つか作った覚えもないけど」

「でも、」

「てか俺も不安だし」

「なんで?」


落としてた視線を上げると、昴先輩の瞳とかち合う。

その一瞬だけでも物凄くドキドキした。


「だってお前、ちゃんと見とかねーと何しでかすか分かんねーし」

「仕出かす?」

「ホロホロ着いて行ったりすんだろ」

「しないよ」

「前、聖に着いて行ったじゃねーかよ」

「だってそれは昴先輩の弟じゃん」

「弟だとしてもアイツも男だからな。変な男には絡まれるし、それにサクヤとホテルに行くし、なんなのお前…」

「えー…でも、だってあれは昴先輩が…」

「俺が、なに?」

「…ううん。なんでも」


素早く首を振った。


「とにかく俺もすげー不安なんだけど。莉音だけじゃない」

「…んっ、」


不意に塞がった唇に息をするのを忘れてしまった。

何度も重なり合う唇に次第に目を閉じる。


昴先輩の力によって、あたしの身体が床に倒れ込む。

覆いかぶさるように重ね合わす唇が次第にゆっくりと離れ、


「莉音、俺と付き合ってくれんの?」

「…うん」


コクリと頷いたあたしに昴先輩はフッと笑って、もう一度唇を重ね合わした。
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