恋の訪れ

―――…

重い瞼をゆっくりと開く。

いつの間に寝てしまったんだろうと思い、身体を起すと、


「…っ、」


露わになった胸をシーツで隠し、咄嗟に隣に視線を送った。

裸のままで眠っている昴先輩に、言葉すら失う。


床に散らばった制服が、まさにさっきまでの事に気づかされる。

カーテンの隙間から見える明かりが徐々に落ち始め、散らばった服を手にしようとした時、


「…莉音」


グッと引かれた腕に、再び身体がベッドへと倒れ込んだ。


「先輩…、もう夜に」

「このまま朝まで寝とこーぜ」


グッと抱え込まれた身体に昴先輩の温もりを感じる。

このまま…朝まで…


「えっ、ちょ、無理。無理だって」


昴先輩の肩に手を当て、身体を引き離す。


「なんで?」

「なんでって皆、帰って来るでしょ?」

「さぁ…」

「さぁって…とりあえず服…」


シーツで隠す様に身体を覆い、制服に手を伸ばすと、隣から昴先輩の呆れた様なため息が降りかかった。


「てか莉音さぁ…なんで恥ずかしそうに隠すわけ?」

「え、だって…」

「さっきヤったのに」

「もうお願い。言わないで」

「だって、ほんとの事だし」


そんなあたしに昴先輩はクスクス笑い、制服を身に纏う。

終わった後にそんな事を言われると物凄い恥ずかしい。


なのに先輩は意地悪だから、あたしを言葉で虐めてくる。
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