恋の訪れ

「昴先輩ってほんと意地悪。そうじゃなくても帰ったらお姉ちゃんに虐められるのに…」

「香恋さん?」

「そうだよ。今日はなにしたって?」

「だから言えばいいだろ。ヤッてきたって」

「だから言えないってば」


もうって、顔を顰めると昴先輩は再び声にだして笑う。

先輩も服に着替えると、床に座ってタバコを咥えた。


「つーかさ、俺…これから学校に行く機会減るから」

「え?」


不意に顔を上げると、昴先輩はタバコを咥えベッドに背をつけたままボーっと天井を見上げてた。


「向こうの学校に行くから」

「……」

「って言っても、こっちの学校は時々行く」

「…うん」


そうだった。

昴先輩はあたしの為に学校に行ってんだった。

ちょっと浮かれてたあたしはそれさえも忘れてた。

時々って、どの程度で来るんだろう。

むしろ来月の終わりには卒業じゃん。


会えなくなると思うと、なんだか切なくなってきた。


「って、おーい、莉音」


不意に頭がゆらりと揺れる。

昴先輩が額を突いた所為であって、ハッと意識が戻る感覚を覚えた。


「あ、…え?」

「つか、またなんか考えてた?」

「ううん」

「ってか、なに?」

「なんでも…」

「つかさ、莉音って、いつまで俺の事、先輩って呼ぶわけ?」


突然そんな事を言うもんだから思わず首を傾げた。

いつまでって、多分ずっとだと思う。


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