恋の訪れ
「ねぇ、莉音、昴先輩に聞いたのー?」
次の日、目の前で蔓延の笑みで見つめてくる真理子に、今更ながらなんとなく後悔した。
真理子の眼差しが怖い。
「うん」
「なんだって?」
「お願い。真理子聞かないで」
なんとなく恥ずかしそうに俯くと、真理子はクスクス笑みを漏らす。
「なーんだ、やっぱ付き合ってんじゃん」
「……」
「いいなぁー莉音。昴先輩、超イケメンじゃん」
「ま、真理子はタツキ先輩居るでしょ?」
「いるよ。でも同じ学校じゃないしねー…」
珍しく少しシュンとした真理子。
「でも昴先輩は、もう学校あまり来ないんだって」
「え、なんで?」
「向こうの学校に行くって言ってた」
「でも、もう三年生はあんま学校来ないじゃん」
「うん」
「だけど莉音って愛されてるよね。お馬鹿な莉音の為に普通そこまでやらないよ」
「…え?なんかさっきの言い方あまり嬉しくないけど」
「そう?そんな事ないけど」
「そんな事あるよ」
面白がってクスクス笑う真理子に顔を顰めた。
でも、やっぱり昴先輩はなんであたしの為になんか。
理由を聞いても答えを聞いても未だに分かんない。
昴先輩に色んな負担をかけてる事があたしにはなんだか切なかった。