恋の訪れ

「って言うか、ヤバいのはお前の頭だろーが」

「えっ?」

「お前、また英語再テストな訳?」

「…なんで知ってるの?」

「真理子ちゃんから聞いた」

「……」


…やっぱり。

やっぱり真理子だった。

当たり前に、真理子しか知らないけど、そんな事いちいち言わなくていい。


「進級できんのかよ」

「うん、出来るよ。合格したら出来るもん」

「その合格が出来ねーだろ」

「……」

「帰って教えるから頭に詰め込めよ」

「…はい」


まさかの予想外に先輩の家で勉強をする羽目になった。

先輩の部屋に並べられる英語の本が、正直、意味不明だった。

だからと言って、やらない訳にもいかない。


絶対にしなくちゃいけないから、もう先輩に教えてもらうしかない。

真理子は嫌だって言われるし、結局は考えてみると先輩しか居なかった。


「プリント今あんの?」

「あるけど見せたくない」

「は?見せろよ。分かんねーだろ」

「やだ」

「は?」

「え、ちょっ、」


あたしの鞄に手を伸ばした先輩はそのまま鞄の中に手を突っ込む。

引き戻そうと手を伸ばすと、もう遅かった所為か、その先輩の手にはプリントがあった。

案の定、眉間に皺を寄せた先輩がため息とともに、上から下までプリントに視線を送っている。


あー…また馬鹿にされる。

だけど当初の時より気分が楽だったのは確かだった。

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