恋の訪れ

「お前…36点って、なに?」


物凄く先輩は呆れてた。

一度チラッとあたしを見たものの、その視線は物凄く冷たかった。


「何って言われても…この前より頑張ったし、この前より点数いいもん」

「そー言う問題じゃねーだろ。とにかく今から教える事、全部、頭に詰め込め」

「…分かった」


素直に頷いて、昴先輩が紙にひたすら文字を書いていく。

だけど、やっぱり意味不明で時間が経つ事に疲れが倍増する。


間違ってる所も全て直し、別に関係ない英文までもやらされる。

こんな所、絶対にテストにでないじゃんって、ところまで昴先輩は教えてくる。


そんな頭が良くないあたしに、そこまで覚えられるはずがないって思った時。


「莉音さ、俺が居なくなったらどーすんの?」

「…え?居なくなる?」


どう言う意味なのか、理解してると、昴先輩は走らせていたペンをピタリと止めた。


「あー…、だから俺が卒業したら」

「うーん…家まで行っちゃう」

「……」

「だって会えなくなる事なんてないでしょ?」

「……」


首を傾げて昴先輩を見ると、先輩はあたしからスッと瞳を逸らす。

そのまま持っていたペンを置き、テレビの横に置いてあったタバコの箱を掴む。

その中から1本取り出した先輩は咥えてジュポッとジッポの音を鳴らした。
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