恋の訪れ
「分かった。莉音の耳も限界だろーし、明日な」
「えっ!?明日もあるの?」
こんなに勉強したのに、まだやることにビックリして声までも驚く。
正直、耳が疲れてる。
でも、それどころか頭のほうがもっと疲れてた。
「当たり前だろ」
「えー…もう十分だよ」
「十分じゃねーだろ」
「なんでそんなに必死になってんの?」
「莉音の為」
「あたしの?なんで?」
「つか、とにかく明日な。俺、学校行かねーから、終わったらここに来て」
「……」
先輩の言う事に何故か納得が出来ない。
面倒くさい。
いや、来るのがじゃなくて勉強が面倒くさい。
こんな点数をとったあたしが悪いんだけど、正直もういい。
表情を崩すあたしの顔を覗き込むように昴先輩は見つめ、そして口角を上げた。
「俺に会えなくてもいいわけ?」
「……」
ずるい。すぐにそう言うところ、ほんとにずるい。
あたしの答えを知ってるくせにそう言う昴先輩が、ほんとにズルイ。
「莉音の好きなケーキかってやるから」
あぁ、だめだ。
なんて単純なあたしなんだろう。
その言葉で俯いてた顔がスッと上がる。
目の前の昴先輩の瞳とかち合った時、「やっぱ単純だな、莉音は」昴先輩も同じことを思ってたらしい。