恋の訪れ

「それ食ったら次やるぞ」

「はぁ!?何言ってんの?頭おかしいんじゃない?」


ケーキをお皿に乗せた瞬間、あたしの声が部屋に反響した。

その所為でタバコに火を点けたであろう昴先輩の眉間に皺が寄る。


「頭おかしいのはお前だろうが。こんな点数とっからだろ」

「昴先輩は間違ってる」

「は?」

「先輩とあたしは違うんだから一緒にしないでよ」

「つかお前と一緒にされたら困る」

「はぁ!?なにそれ、ひどいっ!」


軽く睨んで、ケーキを無理やり口に入れる。

だけど、あまりの美味しさに思わず笑みが零れた。


「やっぱお前、馬鹿だな」


フッと鼻で笑う昴先輩に顔を顰める。

やっぱり昴先輩は初めて会った時から同じで何も変わってない。


「…全然優しくない」


つい心の中で言ったつもりが気づけば口から漏れてた。

昴先輩はタバコを咥えたまま更に眉を寄せる。


「なんつった?」

「……」

「優しくないって、何?」

「てか聞こえてんじゃん」

「どー言う意味?」

「どうって、そのままだよ。だって昴先輩、優しくないんだもん。ほら、彼氏だったら優しくするのが普通でしょ?」

「それって誰が決めたわけ?」

「うーん…世の中全般?」

「馬鹿じゃねーの?」

「ほら、また馬鹿って言う」

「あのな、」


そこで一旦、言葉を止めた先輩はタバコを灰皿に押し潰した後、ゴロンと床に寝そべった。
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