恋の訪れ

「莉音の事、何も想わなかったらここまで教えてないって。どーでもいい奴だったら何もしてない」

「でも、必死すぎ」

「必死?」

「ここまで教えなくてもいい」

「莉音の為って言っただろ」


そう小さく呟いた昴先輩は、目を隠す様に腕を置く。

あたしの為、あたしの為って、別にあたし英語に全てを賭けてもないし。


「あたしの為って言われても。解らなかったらココに来る」

「……」

「だからその時に教えてもらう」

「……」

「だって、会える日いっぱいあるもん」

「……」

「ねぇ、聞いてる?」

「……」


全く声を出さなくなった昴先輩をチラリと見る。

ケーキを食べてた手を止めて、昴先輩の腕を軽く揺すった。

目を腕で覆っている所為で、表情すら読み取れなくて、何度か腕を揺すった。


「ねぇ、昴先輩。聞いてんの?」

「あぁ、聞いてる」


返ってきた返事と言えば、別にどうでもいいような呟きだった。


「だからね、ココに来るから」

「あぁ…」


もう、なんなのよ。と思うくらいに素っ気ない言葉。

昴先輩の身体から手を離し、再びケーキを口に運んだ。


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