恋の訪れ

「何してんだよ」


上から見下ろす先輩はため息を吐き捨て、「だって重いんだもん」そう言って、しゃがみ込んで雑誌を手にしようとした時。


「え、えぇっ!!」


あまりにも大きな声が教室に反響してしまった。

散らばる雑誌はどれもエロ本で。

あたしには衝撃過ぎるようなものが無残にも写しだされている。


「だからちゃんと持てって」

「ちょ、なんなの、これ!」

「なんなのってエロ本」

「こんなのココで見てたの?」

「これサクヤのん」

「サ、サクヤ先輩!?」

「そう」


脚立から降りた先輩は何もなかった様に散らばった雑誌を掻き集めていく。

ありえない、本当にありえないんだけど。


「って事は、昴先輩は見てないんだよね?」

「見た」

「えぇっ、見てたの?なんで!?」

「なんでってサクヤが持ってきたから」

「だからって見なくても――…」


その拍子にグっと腕を掴まれた所為で、必然的にしゃがみ込んでしまう。

あたしの顔を覗き込むように見つめて、昴先輩は口角を上げた。


「なに?あたしが居るのに見ないでって?」


やっぱ昴先輩は意地悪そうにそう言って、鼻で笑った。

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