恋の訪れ

「…昴先輩、」

「うん?」

「物凄く寒い」


ひんやりとした空気が自棄に寒い。

この教室自体寒い所為か、身体全身が冷たい。


「じゃ、帰ってからする?」


あたしの胸からそっと顔を離した先輩は、覆いかぶさったままあたしを見下ろす。

帰ってから…

一瞬、頭の中でそう思うも、このまま昴先輩に触れたいと言う気持ちのほうが大きかった。


「ううん」

「ほら我慢出来ねーのは莉音のほうだろ」

「違うよ」

「じゃ、帰ろ」


目の前の視界からスッと昴先輩の顔が消える。

そのままあたしから離れてく先輩の腕をあたしは咄嗟に掴んだ。


「やだ、帰りたくない」

「ほら、やっぱり我慢出来ねーの莉音だろ」

「…っ、」


そうかも、そうみたい。

でも何でか分かんないけど昴先輩に触れたい。


「どした?莉音らしくねーの?」

「……」


あたしらしくないって何?

むしろ、それはそっちのほう。

昴先輩だって、昴先輩らしくないよ?ここ最近ずっと。

だからなのかも知れない。

もっと触れたい――…


「俺が温めてやるから」

「うん」


触れ合った体温が自棄に温かかった。

正確に言うと、昴先輩の体温が物凄く温かった。

ここまでこんなに温かくなるんだって、思い知らされた温もり。


このままずっと温もりに触れたいって、そう思ったのに―――…


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