恋の訪れ
―――…
卒業式が明日に控えた日。
「ねぇ、さっき香澄さん見たんだけど」
今から帰ろうとした時、真理子は不思議そうに首を傾げた。
「え、香澄先輩?見間違いじゃない?なんでウチの学校に香澄先輩が居るの?」
「いや、絶対見間違いじゃないよ。あっちの制服着てたもん」
「えー…」
昇降口までたどり着いて、靴に履き替えた時、
「あ、ほらやっぱり香澄さんだ」
真理子にグっと腕を引っ張られて、数歩前に進む。
その前方に見えたのは真理子が言う通り香澄先輩だった。
「え、何してんだろ、香澄先輩…」
「さぁ…。あっ、サクヤ先輩」
「ほんとだ」
香澄先輩はサクヤ先輩の腕を掴むと、辺りをキョロキョロしながら足を進ませていく。
それが物凄く焦ってた。
焦ってたのは香澄先輩だけで、サクヤ先輩は面倒くさそうに顔を顰めてた。
そのサクヤ先輩の腕をグイグイ引っ張って行く香澄先輩の姿は角で消える。
「ねぇ、ちょっと怪しくない?もしかして告白?」
「えー、な訳ないでしょ?」
「でもなんか焦ってたよね?」
「うん」
「ちょ、行こうよ莉音」
「えぇっ、」
グッと引っ張られた腕。
真理子は興奮しながらも嬉しそうに足を進めて行く。
必然的に着いて行くあたしの足。
だけど、ちょっと気になったのは確かだった。