恋の訪れ

「昴に問いただした所で言ってくれないでしょ?だからサクヤの所に来たの!」

「……」

「ねぇ、何でなの?」

「…莉音ちゃんに言ったら、泣きじゃくって行けなくなるからって、」


サクヤ先輩の言葉に、言うまでもなかった。

もうあたしの目から涙が頬に滑り落ちてたから。

嘘でしょ、昴先輩…


「でも、言わないで行ったら、もっともっと莉音が悲しむ」

「分かってるって。俺も、昴に何度も説得した。言った方がいいって何度も説得した。でも、アイツは折れる事なかった」

「……」

「行ったら行ったで、なんとかなんだろって。そんな感じ」

「なにそれ…意味わかんない。昴は…昴はどれくらい行くの?」

「5年…」


もう眩暈を通り越して倒れそうだった。

行ったら行ったで、なんとかなるって、どー言う事?なんとかなるわけないじゃん。

目から落ちてくる涙とともに、震えてくる身体。

止めようと思っても止まらない涙に、ただ俯くしかなかった。


5年も…

5年もあたしは待てない。そんなの、待てるわけがないよ。


「…莉音?」


小さい小さい真理子の声が耳を掠める。

″大丈夫、莉音?″

付け加えられた声とともに真理子にギュッと身体を抱え込まれる。


大丈夫なわけがない。…倒れそうだよ。

今が現実なのか、夢なのかもわからないまま意識をうしないそうな感覚になる。

あたしが泣くから言わないって?

そんなの、聞いても聞かなくても、あたしは泣く。


むしろ、離れたくなんてない。
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