恋の訪れ

家に着き、乱暴に靴を脱ぎ捨てる。

荒れた息を必死で抑えようとしてると、俯くあたしの目にお姉ちゃんの足が見える。。


「あー、莉音。丁度良かった。あのね、ママとパパ知り合いの人たちと温泉に行くーって言って今日帰って来ないの」

「……」

「莉音の事、よろしくって言われたんだけどさ、あたし急に店に出向かわなくちゃいけなくてさ。朝まで帰れないけど大丈夫?」

「……」

「…って、なに?あんた泣いてんの?」


グッと腕を引っ張られて顔を覗き込まれる。

潤んだ視界にお姉ちゃんがぼやけて映り込んだ。


「え、莉音、どうしたの?」


肩に手を添えて覗き込んでくるお姉ちゃんの手を払い、あたしは駆け足で自分の部屋に向かった。

そのままベッドに倒れ込んで、シーツを深く被る。


「ねぇ、莉音ってば!」


ノックもせずに入って来るお姉ちゃんは、あたしの身体を軽く揺する。

だけど、何も話したくない。話せる状態なんて何もない。

そんな事より昴先輩が消えちゃう。

あたしに何も言わずに消えちゃう。

ううん。そんな事、言われても…あたしは納得なんて出来ない。


「ちょっと、莉音?何とか言いなさいよ」


お姉ちゃんが身体を揺するからシーツが徐々に捲れてく。

その捲れそうになったシーツを再び引っ張り上げると、「もう、なんなのよ」面倒くさそうなお姉ちゃんの声が耳を掠めた。
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