恋の訪れ

お姉ちゃんが部屋を出て行ってからどれくらい時間が過ぎたのかも分かんなかった。

ひたすら目を瞑って、深い闇に入ろうとしたけど未だ潤んでくる瞳から零れ落ちる涙の所為で寝付く事なんて出来なかった。

目が痛い。きっと物凄く赤く腫れてるに違いない。

だけど起き上がって鏡を見る事すら出来なかった。


体内時計では2時間を過ぎてるだろうか。

物凄く、物凄く時間が経ったのは確か。


早く、このまま寝落ちしたいのにって思った時だった―――…


バンっと勢いよく開いた扉に、


「ちょっと、何なのよ!また昴…アンタが原因なわけ?」


…っ、

昴先輩、来たんだ。

でも無理。顔を出すなんて絶対に無理だから。


「おい、莉音?」


昴先輩がベッドに座ったのか、ギシっと鈍い音とともにベッドが沈む。


「もぅ、ほんとに困るんだけど。パパ達は帰らないって言ったから、莉音の事よろしくねって言われたのに」

「……」

「でも、あたしも帰れない用事が出来たって言うのに、こんな調子じゃあたし出かけられないでしょ!!」

「……」

「ねぇ、昴聞いてんの?」

「聞いてる」

「何があったか知らないけど、ホントに困るんだけど。あたし出かけられないじゃん!」

「俺が居るから行けよ」

「行けって言われても朝まで帰って来ない。パパもママも帰って来ない」

「だから俺が居るから行けっつってんだろ」

「あー…ほんと偉そう。明日までにちゃんと和解してよね」


ガチャっと聞こえたドアの閉まる音。

きっとお姉ちゃんは出て行った。

だけど正直、昴先輩と2人になんてなりたくなかった。


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