恋の訪れ

昴先輩が来てから、また物凄い時間が経ったと思う。

ひたすらあたしの名前を呼ぶ先輩に、あたしは無視を突き通す。


そしてどれくらい時間が過ぎたのか分からなかった時、ため息とともに先輩が立ち上がったのかベッドが少しだけ弾んだ。

そのまま何も言わずに部屋を出て行く昴先輩。

気配すらなくなったと感じる空気に、あたしはそっとシーツを剥ぎ取った。


顔をだし、起き上がるとそこには昴先輩の姿など見えるわけもなく、あたしは窓側に行って窓を開けた。

冷たい空気が肌を掠める。

その空気が今のあたしには丁度良かった。

熱くなった目を冷やしてくれるような冷たい風に、あたしは深く深呼吸をした瞬間、エンジン音とともに走り去っていく昴先輩の車を目にする。


朝まで居るって言ったじゃん。

だからと言って居てほしい訳でもない。今日は一人の方がよっぽどマシ。


窓を閉めて風呂場に向かった。

お姉ちゃんがお湯を溜めていてくれたのか、その湯船に浸かり顔を沈める。


もう何もかも忘れたい。

むしろ高校生になった4月。昴先輩と会う前に戻りたい。

そしてずっと出会わない様にともう一度やり直したい。


こんなにも…

こんなにも…

昴先輩の事を好きになるなんて思ってもみなかった。

いつの間にか、好きで好きでたまらなくて、離れる事が嫌って思うほど好きになるなんて思わなかった。


5年間。あたしは絶対に待てない。

そんな待てるほど、あたしは強くないよ?
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