恋の訪れ
赤く腫れあがった瞼を冷水に何度も冷やし、少し落ち着かせた。
何度も何度も漏れて来るため息が、嫌ってくらいに自分の耳に入り込む。
髪を乾かしながら目の前の鏡に映る自分に、またため息を吐きだす。
さすがにもう寝れそうと思った。
相当疲れたのか、瞼が重く感じる。
もう一度、自分の部屋を入ろうと開けた瞬間、
「…っ、」
ベッドに凭れる様に背を付けている昴先輩の姿を目にした途端、咄嗟にドアを閉めた。
なんでいるの?もう帰ったんじゃなかったの?
「…おい、莉音」
案の定、背後から昴先輩の声が聞こえたと同時に腕を掴まれる。
「いつまで無視すんの?」
「……」
「都合悪くなったら無視すんの、やめろって」
「…だって!」
やっと声が出たけど、それ以上は口が開く事なかった。
グッと引っ張られて部屋に入り、昴先輩に両肩を押される所為で必然的に腰を下ろす形になる。
座り込んで、膝を抱える様にしてあたしは顔を沈めた。
「もう、単刀直入に言うけど。5年間、アメリカに留学する」
「…っ、」
アメリカって、そんな事を言うからまた涙が零れた。
そんな事、昴先輩の口から聞くと涙が溢れ出した。
ホントだったんだって言う現実を味わってしまったから。