恋の訪れ
「あっちで本格的に勉強する」
「……」
「…莉音?」
「…いやっ、」
「え?」
「嫌だ。離れたくない。そんなに待てない。あたしも一緒に行く」
だって待てないよ、そんなに。
5年間、会えないなんて無理でしょ?
昴先輩は平気なわけ?
「一緒にって、莉音はまだあと2年。残ってんだろ」
「学校なんてやめて着いて行く」
「悪いけど、それは俺が断る」
「だって、無理だもん。待てないよ…」
不意に顔を上げた。
次々に涙が溢れ出す所為か、視界がぼやける。
そんなあたしの頭を昴先輩はゆっくりと撫ぜた。
「だから、だから莉音には言いたくなった」
「だって昴先輩は…あたしの所為で行くんでしょ?」
「違う。莉音の所為じゃない」
「じゃ、あたしの為に行くんでしょ?あたし、そんな事頼んでない」
「……」
「治してなんて言ってない。聞こえるから…聞こえるから、いいよ別に」
「今、聞こえてたとしても、この先分かんない。俺の声、聞こえなくてもいいのかよ」
「別にいい」
離れたくないが為に、思わずそう呟いてしまった。
先の事なんて考えてない。
今の事しか考えてないよ…