恋の訪れ
「俺は嫌だから。じゃ、どうしたら莉音は納得するわけ?」
「…納得?」
意味の解らない言葉に首を傾げた。
納得って、なんのだろう。
「莉音が、行っていいよって、どうしたら納得できる?」
そんなのあるわけないじゃん。
納得は出来ない。
5年なんて物凄い期間、あたしには絶対に待てないから。
「出来ない。無理だよ、あたしには待てない」
「じゃ、一旦…別れよ」
「……」
何を言われてるんだろうと思った。
真剣に言ってくる昴先輩の事が理解出来なかった。
「付き合ってるって言う空間に居る事が苦しいのなら、一旦別れよ。そのほうが楽」
「嫌だっ、絶対いや。嫌だよ…」
別れて楽になるはずがない。
もし戻れるのなら、入学した4月。昴先輩と会った日じゃなくて。
もし戻れるのなら、ずっと昔…
あの幼少期に戻りたいと思った。
ダダをこねてまで、あたしが行きたいと言った、あの日に。
どうしてそんなに行きたかったのか、そこに何があったのか、もう一度この目で確かめたいと思った。
そんなに行きたかった理由が知りたかった。
もし行ってなかったら、あたしの耳は正常で、昴先輩は留学の選択なんかしなかっただろう。
全てはあの始まりが原因で、全てはあたしが作った話。