恋の訪れ

涙が止まらなかった。

それを拭う事も出来なかった。

頬に伝っていく涙が次々に落ちていく。


嫌だ、嫌だとダダをこねている自分は、きっとあの時と同じなんだろうと思った。

そしてあの時と同じように困っているのは昴先輩。


あの時、ダダをこねて結局は昴先輩が折れてくれたのであれば、今回もダダをこねるあたしに昴先輩は折れてくれるんじゃないだろうかって思った。

そんな事を考えてるあたしは、どうしようもない奴なんだろうと自分にでも分かっていた。


だけど、ずっと胸の中から溢れ出す気持ちは抑えきれそうになかった。


「…莉音、もうこれ以上泣くな」

「……」

「お前…自分でも気づいてねーの?」

「……」

「左耳、擦りすぎ。聞こえてんの、俺の声…」

「…うん」


聞こえてるよ。

ちゃんと聞こえてる。

正確に言うと、無理やり声を聞こうとしてる。

物凄く神経を使って集中させてる。


「とりあえず、寝ろ」

「……」

「そんな調子で話す事できねーし」


頬に伝った涙を昴先輩が拭い、グっと抱えられた身体。

そのままベッドに寝かされると、あたしはシーツに包んで蹲った。


耳もだけど、頭が相当に疲れる。

衝撃的な言葉をいっぱい聞いた所為か、頭が自棄に重い。

まだ話なんて終わってないけど、これ以上あたしも話が出来るような体力なんてない。

どうせ、泣きじゃくって、泣きじゃくって、昴先輩を困らせるだけ。


あたしが折れないと、昴先輩は困ってる。

あたしが困らせてる。

これ以上、何も考えたくないあたしは目を強く瞑った――…





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