恋の訪れ
「…分かった」
もうその選択しかないと思った。
行かないでって言った所で、何かが変わる訳でもなく。
ただ、自分のわがままを吐き出してても、どうしようもない事なんだって思うから。
だからと言って待つ自信なんてない。
だけど、待たなきゃいけないって、そう思った。
「…莉音」
あたしの名を呼んだ昴先輩は真上からギュッと抱きしめ、首筋に顔を埋める。
その昴先輩の頭を抱え込み、目を強く瞑った。
何でこんなにも好きになってしまったんだろうって。
どうしてここまで昴先輩に逢着してしまったんだろう。
全然、好きじゃなくて興味すらなかったのに、気づけば昴先輩があたしの中で物凄く大きな存在になってた。
物凄く、好きなんだ…
「…ねぇ、昴先輩?」
「うん?」
「待ってる…」
「あぁ」
「ねぇ、先輩…」
「うん?」
「キスしてい?」
「あれ?昔の莉音に戻った?」
「そんな昔、知らない。…ダメ?」
「いいよ」
フッと笑った昴先輩の顔が一旦あたしの肩から上がる。
そのまま瞳がかち合うと、お互いどちらからと言うわけでもなく、唇が重なり合う。
頭上から唇を求めて来る昴先輩の首に両腕を巻きつける。
何度も何度も重なり合う唇に対して寂しさが増し、不意に落ちてしまった涙がとても切なく感じてしまった。