恋の訪れ
放課後、真理子と肩を並べて歩くあたしの隣で真理子はため息をつきながら財布の中をあさっていた。
「もぅ、2千円しかないし」
「それで十分だよ」
「はぁ!?アンタねぇ!!」
「足りなかったら、あたし持ってる」
「足りなかったらでしょ?足りたら、あたしじゃんか」
「だって真理子も食べたいでしょ?」
「仕方なく、だよ。仕方なく」
「ほら食べたいんじゃん」
真理子を見つめて頬を緩ます。
その緩まった頬を、真理子は顔を顰めたまま軽く引っ張った。
「この食いしん坊。ケーキと昴先輩どっちが好きなの?」
「どっちもだよ」
ふぅ…息を吐き捨てた真理子はあたしの頬から手をスッと離す。
「どっちかって、聞いてんの。ケーキ一生食べられないけど先輩とずっと居れる。それか、先輩とは二度と会えないけどケーキ毎日食べられる。さぁ、どっち?」
「怖い、真理子。なにその選択…」
「怖いのはアンタだよ。どこまでノロケてんの?」
「普通だと思う」
「どうみても普通じゃないよ?」
「だって、昴先輩いなくなっちゃうんだよ?」
「でも一生会えない訳じゃないでしょ?その間、あたしが居るよ?」
「えー…真理子か、」
「もぅ、なんなのよ!!」
ギューっと抱きついて来る所為で足が必然的に止まる。
進めようにも勧められなくて、「ちょ、真理子っ、」身体までもが崩れそうになる。
しかも、こんな大通りで…