恋の訪れ
「おーい、莉音っ!」
不意に聞こえた叫び声。
その声が真理子にも聞こえたみたいで、真理子はあたしに抱きついてた力を緩め腕を離す。
「誰か莉音の事、呼ばなかった?」
真理子は辺りを見渡しながら口にする。
同じくあたしも辺りを見渡してると、
「おーい、莉音。こっち、こっち!」
大通りを挟んで反対側の歩道に目を向けると、両手を左右に振る聖くんが目に見えた。
「あ、聖くん…」
聖くんは近くにある横断歩道の所まで走って信号待ちをしてる。
「え、ちょっと誰よ、聖くんって。莉音、もしかして浮気してんの?」
真理子は興味津々であたしと聖くんに視線を互いに送り、何故か笑みを浮かべた。
「違うって!昴先輩の弟」
「えぇっ、弟!?」
「うん」
「先輩…弟、居たんだ」
「そうなの。性格は全然違うけど」
「ってか莉音も香恋さんと違うでしょ?」
「うーん…」
信号が青になった途端、聖くんは駆け足でこっちに向かってくる。
相変わらず制服を着崩して、チャラそうな風貌。
やっぱ昴先輩とは、ちょっと違う。どっちかっ言うとサクヤ先輩だ…
「やだっ、ちょっと物凄くイケメンじゃん!あんた両手に華だったわけ?」
「はぁ?何言ってんの、真理子」
「だって、ヤバくない?男前すぎ」
真理子は物凄く興奮して、あたしの腕を何度も何度も揺する。
「よぉ、莉音。久しぶり」
少し息を切らした聖くんがあたしに向かって微笑んだ。