恋の訪れ

「おーい、莉音っ!」


不意に聞こえた叫び声。

その声が真理子にも聞こえたみたいで、真理子はあたしに抱きついてた力を緩め腕を離す。


「誰か莉音の事、呼ばなかった?」


真理子は辺りを見渡しながら口にする。

同じくあたしも辺りを見渡してると、


「おーい、莉音。こっち、こっち!」


大通りを挟んで反対側の歩道に目を向けると、両手を左右に振る聖くんが目に見えた。


「あ、聖くん…」


聖くんは近くにある横断歩道の所まで走って信号待ちをしてる。


「え、ちょっと誰よ、聖くんって。莉音、もしかして浮気してんの?」


真理子は興味津々であたしと聖くんに視線を互いに送り、何故か笑みを浮かべた。


「違うって!昴先輩の弟」

「えぇっ、弟!?」

「うん」

「先輩…弟、居たんだ」

「そうなの。性格は全然違うけど」

「ってか莉音も香恋さんと違うでしょ?」

「うーん…」


信号が青になった途端、聖くんは駆け足でこっちに向かってくる。

相変わらず制服を着崩して、チャラそうな風貌。

やっぱ昴先輩とは、ちょっと違う。どっちかっ言うとサクヤ先輩だ…


「やだっ、ちょっと物凄くイケメンじゃん!あんた両手に華だったわけ?」

「はぁ?何言ってんの、真理子」

「だって、ヤバくない?男前すぎ」


真理子は物凄く興奮して、あたしの腕を何度も何度も揺する。


「よぉ、莉音。久しぶり」


少し息を切らした聖くんがあたしに向かって微笑んだ。



< 389 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop