恋の訪れ
「ちょ、莉音っ、苦しいでしょ!」
真理子はあたしの手を剥ぎ取ると、顔を顰めてあたしを見る。
「真理子が余計な事、言おうとしてるからでしょ!?」
「何も余計な事じゃないじゃん」
「だって――…」
「おいおい、莉音、落ち着けよ。聞かなくったってお前の事もう分かるわ」
意地悪く笑った聖くんに深いため息が零れ落ちる。
「やだ、さすが昴先輩の弟。頭、いいんだね」
「兄貴ほどでもねーけど。で?ケーキでも食うのかよ」
「わっ、そこまでも分かっちゃうの?」
「え、だってこの通りってケーキしかねーし。莉音と言ったらケーキだろ」
「わぁー、そんな事もお見通しで」
もうこのタイプの2人が寄り添うとダメなんだと分かった。
聖くんはサクヤ先輩に似てる所があるから、真理子と釣るんじゃダメなんだって分かった。
だって、真理子のテンションが更に上がるから勘弁してほしい。
「ねぇ、聖くん、ケーキ奢ってよ」
盛り上がってる二人の間を割って、あたしは聖くんを見上げる。
「は?何で俺?兄貴に頼めば?」
案の定、聖くんはさっきまで笑みを浮かべてた表情は呆れ顔になり、あたしを見下ろした。