恋の訪れ
「だって昴先輩、忙しいから言えない」
「つか俺だったら言えんのかよ」
「だって聖くん、優しいし。真理子より…」
「はぁ!?なんなの、莉音!!あたしの何処が優しくないよの!ケーキ奢ってあげるって言ったでしょ!?」
グラングランあたしの両肩を揺する真理子に、頭がフラフラする。
ここぞと言っていいほど頬を膨らませる真理子は眉を顰めた。
「ちょっ、真理子っ、」
揺すれる頭を止めようと真理子の腕を必死に止めようとする隣で聖くんの笑い声が聞こえた瞬間、
「おーい、お前ら何やってんの?」
不意に聞こえた声に真理子の手がピタリと止まった。
「あ、タツキ」
その真理子の言葉に軽く深呼吸し難を逃れた。
「よぉ、聖。久々じゃねーかよ」
「そーっすね」
「何やってんの?珍しい組み合わせだな」
「莉音がケーキ食いたいっつーから」
「ケーキ?」
「そうなの、聞いてよタツキ。莉音ったらね、あたしより聖くんの方が優しいって言うんだよ、酷くない?」
また頬を膨らませた真理子はあたしを軽く睨む。
そのふくれっ面な真理子から素早く顔を背けた。
「まー、あながち間違っちゃいねーけどな」
なんて言うタツキ先輩の言葉に、思わずクスクス笑みを漏らしてしまった。
「はぁ?ちょっと莉音!何笑ってんのよ!!」
「ま、真理子、痛いよ」
ギューっと頬を摘まむ真理子に顔を顰める。