恋の訪れ

「なんだ、この高い金額。タツキに責めたらお前に聞けっつーから」

「あ、もしかして昴先輩、その為にあたしに会いに?」

「だったら何?」

「いや…で、でもね。タツキ先輩が払ってくれるって言うから」

「サクヤもそうだけど、アイツらが払うわけねーだろ。で、何でこんな高い金額になんだよ、聖とタツキはケーキ食べねーだろうが」

「あ、うん…あのね、莉音ちゃん食べていいよって言われたから2つ食べたの」

「はぁん!?欲張って2つも食うな。いいか、莉音。お前これから先、ケーキで釣られていくこと、卒業しろ」

「はいっ?」

「お前、ちょっとはノコノコ着いて行きすぎ」

「え、でも真理子が行こうって行く途中で聖くんに出会ってタツキ先輩に出会ったの」


昴先輩は物凄いため息を吐きだす。

だって、本当にそうだし。

でもタツキ先輩が昴先輩に請求するとは思わなかった。


あ、だからか。聖くんがあたしの今後の冥福を祈るって言ってたのって、このことなの?


「まぁ請求されたことにカチンときたのは確か。で、アイツ等だからまだ許されっけっど、お前、知らねぇ奴に、ケーキ奢ってあげると言われたら絶対ついていくだろ」

「えっ、行かないよ!」

「行くね、莉音は」

「だから行かないって、着いて行かないもん。そこまで馬鹿じゃないよ」

「馬鹿だから言ってんだろうが」

「ひどっ、昴先輩ひどすぎるよ」


思わず頬を膨らませて眉間に皺を寄せるあたしに「怒んなよ。ケーキ買ってやるから」と言われ、つい頬が緩んだ。


「ほらな、この馬鹿莉音。あーあ…俺が居ねぇ間、不安で仕方ねーわ」

「なんで不安なの?」

「ノコノコ着いて行くからな、お前」

「だから着いて行かないよ。そっちこそ向こうで何してるか分かんないよ」

「勉強しかねーだろ。お前と一緒にすんな」

「ひどっ、昴先輩って何気に酷いよね」

「とにかくだな、ノコノコ着いて行くなよ。もうすぐで俺、居なくなっから」

「……」


…昴先輩が居なくなる。

そんな事、分かってたけど、昴先輩の口から聞くと物凄く寂しさが増してくる。

5年間も、待てないよ、あたし…
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