恋の訪れ
「あたし…昴先輩の事、ほんとに好きみたい」
「なにそれ。俺はお前より先にお前の事、好きになってたけど」
「好きです…」
「俺も莉音の事好きだよ…」
もう一度唇が触れようとした時、
「…あのさー、ねぇ莉音!?…あ、」
バンっと扉が開いたその所為であたしの身体がビクンと飛び跳ね、触れようとした唇が停まると同時に昴先輩の表情が崩れていく。
そして昴先輩はあたしから距離を置いた。
「香恋さんさー…ノックとかねぇの?」
顔を顰めたまま昴先輩はお姉ちゃんを見る。
「あ、ごめんね。いつもの癖で。まさかヤッてる最中だとは知らなかったしさ」
「その癖やめろよ」
ごめんね。と謝ってる割にはお姉ちゃんの表情はとても嬉しそうだった。
そのあまりにも衝撃的すぎたこの空気にあたしは顔を膝に隠した。
もう、やだ。
あんな所を見られてしまった。
最悪。
「大丈夫。もう開けないし入んないから」
「あたりめーだろ」
「じゃ、どうぞ続きしてねー」
テンション高いお姉ちゃんの声に更に戸惑ってしまう。
続きって、もう無理だよ…
恥ずかしすぎる。
またお姉ちゃんに面白そうに言われんじゃん。
それが真理子や香澄さんにも知れ渡ってんじゃん…
最悪だよ。
本当に最悪だよ、
もう、消えたい…
「莉音。なに俯いてんの?」
「だって…」
「ねーちゃん、入って来ないって言ってたし、さっきの続きすんぞ」
「…え、続きって?」
思わずあげた顔。
そして昴先輩はクスリと笑った。