恋の訪れ
「ぎゃっははははは――――…」
部屋中に響く真理子の笑い声に思わず耳を塞ぎたくなってしまった。
「超、ウケんだけど!で、何?1週間で終わったの!?」
笑い声とともに続けられる言葉に、あたしはため息をつきながらコクンと頷く。
「そうなの…」
「1週間って、付き合ってたって言わないじゃん。ねぇ、香澄(かすみ)さん?」
真理子は笑いを押さえながらファッション雑誌に目を向けている香澄先輩に視線を送る。
ゆっくりと雑誌から視線を上げた香澄先輩は笑う事なく、
「そもそもその男の事が好きじゃなかったんじゃん」
って、あっさり返してきた。
「ち、違うよ!あたしは好きだったの!」
「だったら会ってあげなよ」
「それがねぇ…面倒くさかったの」
「ほら、好きじゃないじゃん」
そう言った香澄先輩はやっぱりあっさりだ。
なのに。
「だけど、思ってたのと違うって。超、ウケんだけど!莉音(りおん)をどんなふうに思ってたんだろうね、その男」
未だにケラケラと笑うのは中学の時からずーっと仲良しの真理子だ。
薄い茶髪のボブの髪を耳に掛け、そこから見えるピアスが輝かしい。
要するに、高一だとは思えない要素。