恋の訪れ
「キスの続き」
昴先輩の顔が近づいて来る。
それにハッとしたあたしは思わず両手で昴先輩の口を塞いだ。
「だ、ダメだよ、」
一瞬にして昴先輩の眉間に皺が寄る。
あたしの手を昴先輩が離すと、また昴先輩は意地悪な笑みを見せた。
「なんで?隣の部屋にねーちゃん居ると困るから?」
「ま、また入って来るかもでしょ?」
「来ねーっつってただろ」
「で、でもっ、」
「莉音が声出さなかったら良くね?」
「そーじゃなくて、」
「あー…あれか。ねーちゃん居んのにヤッてたら興奮するとか?」
「…っ、」
なんか想像してたらドキドキしてきた。
やばい。
あたしは何、想像してんだろう…
「お前、なに想像してんの?」
「えっ、想像?そんな事してないよっ、」
「莉音のばーか。莉音の声、聞きたいからしねーっつーの」
「…っ、」
また、そんな事言うでしょ?
なんでか知んないけど恥ずかしくなってしまった。
そんな事を言われると、声出すのが恥ずかしくなってしまう。
「つか何もしてねーのに想像だけで恥ずかしがんなよ」
「恥ずかしくなってないし、想像もしてないもん」
「はいはい。なんかアレだな、居心地悪いわ。行くまでに莉音と居れる回数もあんまねぇし、どっか行かね?莉音の行きたいところでも」
「……」
そっか。
そっか。そうだよね…
あとわずかなんだ。
「莉音、聞いてんの?」
「うん…」
「何処行きたい?」
そんな所、ないよ。
昴先輩と一緒に居れたらそれでいい。
それだけでいい。