恋の訪れ
「あ、そだ。ママがね仕事遅くなるから2人でご飯は済ませてってさ。パパも遅いからご飯いらないみたいだし」
「そうなの?」
「だから莉音に作ってもらおうとおもって」
「えー…またあたし?たまにはお姉ちゃんがしてよ」
「無理よ。あたし料理出来ないから」
得意げに言う事じゃない。
なんでそんなに自信気に言ってんのか分かんない。
めんどくさいなぁ…なんて思ってると、
「香恋さん、一人で食って。俺、莉音と食べてくっから」
その言葉にあたしは何度も頷いた。
「なんかそうなると思ったけど…ま、別にいいわよ。誰か奢ってくれる男でも探そうかなー」
シレっとそう言ったお姉ちゃんはルンルンして自分の部屋に入って行く。
「香恋さんってさ、いつもあんな感じなわけ?」
昴先輩はそう言って、階段を下りていく。
「うーん…でもね、パパもママもお姉ちゃんには何も言わないの。あたしにはうるさいのに」
「それはお前が心配だからだろ」
「じゃお姉ちゃんは心配してないって事?」
「……」
「それって不公平だよね?あたしもお姉ちゃんみたいに夜遊びしたいのに」
「お前、すぐ寝っから無理だろ」
「そんな事ないし」
「じゃ夜遊びして何すんだよ、」
「んー、分かんない」
「ほらな。ガキは寝てろ」
馬鹿っぽく笑った昴先輩に頬を膨らます。
「もぉ…」
「つかお前、着替えなくていいのかよ」
制服を着てるあたしに昴先輩は視線を向けてくる。
「もう、めんどくさいからいいや」
「お前、あれだな。これから必要以外、制服でホロホロ歩くなよな」
「えっ、なんで?」
「莉音、馬鹿だから変な男に引っかかるから」
「は?引っかかんないよ」
頬を膨らますあたしに振り返った昴先輩は意地悪く笑って、
「早く乗れよ」
車の助手席のドアを開けた。