恋の訪れ

「昴先輩って何気にひどいよね?」

「そこは何気に優しいだろ?」

「……」

「つかなんか言えよ」

「……」

「ケーキ…」

「うん、買ってくれるの?」

「まだ何も言ってねーだろ。つか買わねーよ」

「だったら何で言うの?」

「ケーキっつったら莉音喋るかなって思った」

「…最悪」


ふてくれるあたしに昴先輩は何故かため息を吐き出す。


「あのな、」


丁度、赤信号になった。

昴先輩は一旦言葉を止め、あたしに振り向く。

微かに感じる視線が、目の端の方の視界に入る。

だけど何故か合わせずらくなってしまって、あたしは左の窓側に視線を向けた。


「避けんなよ」


案の定、昴先輩のツンとした言葉が聞こえ、


「先輩、あたしのこと面倒くさい奴って思ったでしょ?」


なんて言葉を吐き出してた。


「あぁ、思ってる」

「……」

「すげー思ってる。俺、面倒くせー事、嫌いだし」

「……」

「でも、そんなお前の事好きになったの俺だし」

「…っ、」


サラッと言葉にした昴先輩に頬が緩む。

昴先輩に言われると、嬉しい。


「そこで照れんなよ」


青になって発進した時、昴先輩は呆れた様にため息を吐き出した。


「だって…」


そんな事言われたら嬉しんだもん。
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